いまや、新型車には当たり前の装備である、アイドリングストップ機能。しかし昨今は、その弊害が指摘され始めている。なかでも最も指摘されるのが、「バッテリーへの負荷が大きい」ことだ。
実は、筆者のクルマは、1年半ほどでバッテリー交換を儀なくされた。もちろんアイドリングストップ装着車だ。本稿では筆者の経験を交えつつ、アイドリングストップがバッテリーにどれだけの負荷をかけているのか、考えていこうと思う。バッテリーにかかる費用は、アイドリングストップ非装着の場合に対し、ざっくり3倍にも…。
文:吉川賢一アイキャッチ写真:Oleksii Nykonchuk@Adobe Stock
CO2低減には必須のはずだが!?
信号待ちはいいとしても、交差点の右左折待ち、交差点や踏切の一時停止など、スムーズに発進したいときには、煩わしく感じてしまうアイドリングストップ。「地球環境のためならば!!」と、受け入れてきたのだが、昨今のトヨタの新型車には、アイドリングストップがついていないクルマがある(ついているクルマもある)。
アイドリングストップを装備していない理由について、トヨタ広報は、「(燃費やCO2といった環境性能で)充分に競合性がある」としているが、そもそもCO2排出量の削減は地球環境保全が目的なはずなのだから、「減らすほどに良い」はず。
一時期は「車両価格に余裕があればアイドリングストップ機構は付けたほうがいい(=そのほうが顧客満足度も環境への貢献度も高い)」という考え方であったが、現時点では「そのモデルの使われ方やユーザー層、クルマとしての考え方によって、アイドリングストップを付けるかどうかが変わる」といった状況のようだ。つまり、ある種の過渡期に入っているように見える。
RAV4にはアイドリングストップがないのに対し、1年後に登場したハリアーにはついている、というのもそうした理由からであろう。
1.5倍高価で、2倍の交換が必要
アイドリングストップが機能し、エンジンが停止すると、エアコンやカーナビ、最近だと、ドライブレコーダーやデジタルメーターなどへ電力供給はすべて、バッテリーが受け持つ。
さらに、近年はアイドリングストップと同時に充電制御機能が付いていることも多い。「充電制御」とは、走行状況やバッテリーの状態によって、オルタネータの発電を短時間に制御し、エンジンの負荷を軽減して燃費向上を図った車両のこと。
ひと昔前のクルマでは、カーバッテリーが満充電の状態でも、オルタネータが稼動し続けていたため電気が無駄になり、かつ、エンジンにも負荷が掛かりっ放しとなり、燃費悪化につながっていた。充電制御機能には、時間でより多く充電(クイックチャージ)できる性能が求められるため、これに対応できるバッテリーは高価だ。
また、アイドリングストップによってエンジンを停止したあと、エンジンを再始動する際はバッテリーに大きな負荷がかかる(大電流を放電する)ため、アイドリングストップが頻繁に作動するほどに劣化は進みやすい。このためか、バッテリー交換の推奨サイクルは大幅に縮まっている。
アイドリングストップ非装着車のバッテリー交換サイクルは通常「3〜4年に1度」という程度。しかし、アイドリングストップ車は、多くの場合「18カ月または24カ月」と、おおよそ、これまでの「2分の1」程度の寿命となってしまったのだ。