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〈新型コロナウイルスの感染者が急減した要因について、厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の釜萢敏(かまやちさとし)・日本医師会常任理事はメディアの取材に次のように語っている。
「いくつか推測はあるが、はっきり確信は持てない。なぜか解析したいが、分からないことだらけだ」
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長や、“8割おじさん”こと西浦博・京都大学教授も未だに明確な「答え」を口にしていない。〉
感染者数が急に減少した理由について「分からない」と言っている専門家がいること自体が「訳が分からない」です。急拡大と急減の繰り返しは、世界中で起きています。そういう性質のウイルスなのです。全世界の新規陽性判明者数のグラフと日本のそれを見比べても一目瞭然です。第3波から第5波にかけてのピークの時期が、全世界のグラフと日本のグラフでほぼ一致しているのです。
〈そう指摘するのは日本総合研究所・主席研究員の藻谷浩介氏である。掲載のグラフで分かる通り、「世界」と「日本」は同様の曲線を描いている。〉
![なぜ日本人はデータを使ってコロナを正しく把握できないのか 政府もメディアも“お祭り”に加担 [きつねうどん★]->画像>7枚](https://www.dailyshincho.com/wp-content/uploads/2021/12/2112091100_3-714x874.jpg)
毎日の新規陽性判明者数の比較
なぜ感染者の波が世界的に同じなのか
感染者急減について、行動制限が効果を発揮したと言う人がいます。ですが、プロ野球が盛り上がった10月と、第5波が急拡大した7月と、そんなに皆の行動が違いましたか? 昨年もGoToトラベル最中のお盆明けから2カ月間、新規陽性者は減り続けました。そもそも、世界中が日本と同時に自粛を開始したわけではないのに、なぜ日本と世界の感染の山が同じなのか。ワクチンにしてもそうです。例えばベルギーは8月中にはワクチン2回接種率が70%を超えるなど積極的なワクチン接種を行っていましたが、その後、10月に入って急激に新規陽性者が増加しています。他にも、日本のピークは長期休暇と被っていて、「休暇で移動が活発になったから感染者数が増加した」とか「季節の変化で感染者が増加した」などと言う人もいますが、それと世界のピークがほぼ一致していることにはどう説明をつけるのでしょうか。もちろん世界の感染者データには季節が真逆の南半球や、四季のない地域のデータも含まれています。加えて言えば、長期休暇の取り方も日本と世界では違います。そもそもウイルスの消長は自然現象。人間が自在にコントロールできると考えるのは、傲慢というものでしょう。できるのは、うまくサイクルに対応する努力だけです。
死亡率は激減
〈急拡大と収束を繰り返すウイルスのサイクルはコントロールできない。しかし、マスクや手洗いなど、人間の“努力”によって感染者数をなるべく低く抑え、ワクチン接種によって死亡者数や重症化率を下げることは可能である。日本と世界のデータを比較すると、日本の“優秀さ”が際立つ、と藻谷氏は説く。〉
第5波の拡大中に五輪が開催されていた8月2日から8日の期間、日本における人口100万人当たりの新規陽性判明者数は106人。では、同じ時期に他の国はどうだったのか。EUは148人。ワクチン接種が日本より進んでいたアメリカは328人、イギリスは400人。やはりワクチン接種先進国だったイスラエルは405人です。日本はまだ60代以上の高齢者にしかワクチンが行き渡っていなかったにもかかわらず、実は非常に優秀な状況だったといえるわけです。
こうした状況を「さざ波」と言った人がいましたが、もちろん「さざ波」ではない。入院できない患者が続出しましたし、医療関係者も大変な思いをしたわけですから。ただしこれは、1年半経っても対応病床と人員を有効に増やせていないためで、そこは政府の無策が問われるところです。
感染者数を見ると、第5波は第4波に比べて2.7倍と試算される一方で、死亡者数は6割になっている。つまり感染者の死亡率は、5分の1程度に下がったわけです。死亡率の高い高齢者を優先してワクチンを打ったことの、明確な効果です。「ワクチンが効いていない」などと言う人は、感染者数しか見ていないのでしょうか。