![震災後の朝鮮人虐殺はなぜ起きたか 在日コリアン3世の編集長が出版 [きつねうどん★]YouTube動画>1本 ->画像>5枚](https://www.asahicom.jp/imgopt/img/49cf9cdf79/hw414/AS20230904002689.jpg)
講演する劉永昇さん=2023年9月1日、名古屋市中区
名古屋の出版社・風媒社の編集長で、在日コリアン3世の劉永昇さん(60)が、「関東大震災 朝鮮人虐殺を読む」(亜紀書房)を9月1日、出版した。中央防災会議資料で千~数千人といわれる虐殺がなぜ起きたのか。当時の資料や文学作品、報道を読みあさった。
虐殺は被害者数さえ分かっていない。劉さんは、災害時の異常心理が引き金とする論調に違和感を覚え、2020年から同人誌やウェブに連載。これに対し、「デマを書くな」「最近も震災に乗じて悪さをした」などという《反響》すらあり、「きちんと本にまとめよう」と決意した。
重視したのは震災前の朝鮮をめぐる社会情勢だ。初代韓国統監だった伊藤博文の暗殺や独立運動、弾圧……。日本は軍や警察では足りず、在郷軍人や民間人で自衛団をつくり、朝鮮人の運動を鎮圧するなど震災時の前ぶれのような対応をしたことが分かっている。
「厄介な不逞(ふてい)鮮人」という新聞連載まであり、蔑視感情をあおったメディアの役割も見逃せなかった。作家田山花袋が縁の下に隠れた朝鮮人を引きずり出してなぐった、と語ったことも当時の記録から引用した。
劉さんは、デマが人々を駆り立てたというが、日本人こそ「不逞鮮人」という「幻影」を作り出したのでは、と読み解いた。虐殺の刑事責任の追及があいまいなまま、今日に至る。「決着どころか、加害者と被害者を逆転させた見方がいまだに広がっている」。韓国語版も準備中だ。223ページ、税込み1980円。(伊藤智章、高絢実)
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