~ある日の学校~
花陽「い、いきなり何を言うの凛ちゃん!?」
凛「ごめんね。でも凛には分かるよ、なんとなく頭のてっぺんが寂しい気がするの」
真姫「花陽に限ってそんなことないでしょ…ちょっと見せてみなさい」
真姫「」ポンポン
花陽「ど、どうかな?」
真姫「……言われてみれば、確かに…!」
凛「ふふん」ドニャア
花陽「そんなぁっ!?」ガーン!
真姫「こうしちゃいられないわ!」
ピポパポ
プルルルルル ピッ!
真姫「パパ?うん、ちょっと……うん、お願い!」
花陽「真姫ちゃん、なんの電話してるんだろう…?」
凛「イヤな予感しかしないね」
真姫「ドクターヘリを手配してもらったわ」
花陽「私の髪の毛で!?」
凛「職権乱用にゃー!!」
真姫「大げさじゃないわよ、髪は女の命って言うじゃない?」クルクル
花陽「い、言うけど…そこまでしてもらうほどのことじゃ……」
真姫「大丈夫よ、任せておきなさい」
凛「真姫ちゃん真姫ちゃん、この学校にヘリコプターが降りられそうな場所はないよ。屋上に降りるの?」
真姫「そこもちゃんと考えてあるから」
バラララララ
真姫「来たわ!2人とも窓から離れなさい!」
花陽「えっ?う、うん」
ガッシャァァアン!!
花陽「マドワッチャッタノォ!?」
凛「普通に開ければいいのに!」
真姫「患者はこっちよ!私も乗るわ!」
ヒョイ
花陽「ひええ、タスケテー!」
真姫「安心しなさい、花陽の髪の毛は私が守るわ!」
花陽「そういう意味じゃなくてぇ!」
ピャー…ピャー…ピャー…(エコー)
凛「い、行ってしまったにゃ…」
ガラッ
にこ「凛!なんか上の方からすごい音が聞こえたけど!」ハァハァ
穂乃果「多分この教室だよね!…窓割れてる!?」ハァハァ
凛「うん。かよちんが薄毛でドクターヘリが真姫ちゃんで」
穂乃果「うすげ?ヘリ?」
にこ「どういうこと…?」
凛「凛が聞きたいよ」
~病院からの解放~
花陽「つ、つかれたぁ……色々な意味で…」グッタリ
凛「かよちんお疲れにゃ~」
真姫「なんともなくて良かったわね」
花陽「それはそうだけど」
希「結局、何が原因だったん?」
花陽「特に、病気とかは見つからなくて……」
花陽「髪の毛をいじりすぎてるんじゃないのかって、お医者さんに言われました」
ことり「いじりすぎ?」
海未「何か、髪にダメージを与えるようなことをしているわけではないのですよね?」
花陽「はい……だからよく分からなくて」
真姫「そうね」ポンポン
にこ「……んん?」
にこ「みんな、ちょっとあれ」ヒソヒソ
真姫「心当たりは?」ポンポン
花陽「うーん…」
凛「真姫ちゃんはいつもああにゃ」
希「あー…なるほどねぇ」
ことり「真姫ちゃん…」
海未「なすがまま、ですね」
穂乃果「あはは、仲良しさんだねー」
絵里「?」
にこ「なんで分からない顔してるのよ…あれよ、あれ!」
真姫「♪」ポンポンナデナデ
にこ「花陽がハゲそうなのは、真姫ちゃんのせいだって言ってるのよ!」ビシッ
ほのえり「ああー……」ナルホド
真姫「ヴェェェェ!?」
真姫「ち、違うわよ!花陽の髪が薄くなってるのは私のせいじゃない!」アセアセ
にこ「じゃあ誰のせいよ?花陽は特に染めたりもしてないし、あんたが癖で触りまくってるからじゃないの?」
真姫「そ、それは……」
花陽「い、言われてみれば!真姫ちゃんの手、よく私の頭に乗っかっているような…」
真姫「花陽!?」ガーン!
凛「気持ちは分かるよ、かよちんの頭に触ると癒されるにゃ」
真姫「凛…」
凛「髪の毛薄くなるほど触ったりはしないけどね」
真姫「凛!??」ゴーン!
にこ「ほらみなさい!やっぱり犯人じゃない!!」
希「真姫ちゃん、悪いことは言わないからほどほどにしとき?」
海未「そうですね。将来的にどうなるかはさておき、この歳で薄毛というのはいただけません」
真姫「そんな……!別に私は、ただ友達として、スキンシップをとろうとしていただけで……」ガクッ
ことり「それはだいぶ攻めてるかなぁ~」
にこ「真姫ちゃんはそれでいいかもしれないけど、花陽は困ってたんじゃない?」
真姫「…」シュン
花陽「あのね、私は触られるの、嫌ってわけじゃなかったんだよ?」
花陽「むしろ、嬉しかったっていうか……えへへ」
真姫「花陽……」
花陽「でもまだ高校生だし、髪の毛は大切にしたいかな?」
絵里「ならこうしましょう。真姫は花陽の頭の代わりに、私の頭を好きにしていいわよ」
真姫「どうしてよ」
絵里「ダメージが分散するでしょう?花陽ひとりに負担をかけないで済むわ」
絵里「それに、自慢じゃないけど触り心地は悪くないと自負しているわ」
穂乃果「それいい!穂乃果もやるよ!」
ことり「ことりも!」
希「ウチもええよ」
にこ「まぁ、しょうがないわね」
海未「お手柔らかにお願いします」
花陽「みんな…ありがとうございます!」
真姫「……あ、ありが」
凛「真姫ちゃん、みんなでハゲれば怖くないにゃ」
真姫「だからハゲないってば!!分かったわよ!なら遠慮なく触らせてもらうから!」ムキー!
こうして、かしこい絵里ちゃんの提案でμ'sのみんなが身代わりになって、真姫ちゃんがかよちんの頭を過剰に撫で回すことは無くなり、髪の毛と愛と平和は守られたのにゃ。
めでたしめでたし!
などと、その気になっていた凛たちの姿はお笑いだったのにゃ……
しばらくして
真姫「……」ポンポン
凛「真姫ちゃんって、なかなかのテクニシャンだよね」
真姫「そう…」ポンポン
凛「かよちんが怒らないのも納得にゃ。これがウィーンウィーンの関係ってやつなんだね」
真姫「伸ばさなくていいわよ…」ポン…
凛「ごろごろ…」
真姫「………」
真姫「コレジャナイ!!」マキワリチョップ!
凛「にゃ゛っ!?」ゴシャア!!
真姫「…ハッ!ごめんなさい凛!大丈夫!?」
凛「ひどいよ真姫ちゃーん……いつもはもっと手加減してくれるのにー」グスッ
真姫「つい……なんというか、違うのよ」
凛「?」
真姫「花陽の頭に触れている時は、なんとも言えない満たされた気持ちになれたんだけど……」
真姫「なんでかしら……凛を撫でても何かが違うのよね」
凛「髪の毛の長さが足りない感じ?」
真姫「花陽も別に長くないし、そういう理由じゃないと思うわ。そもそも触るのは頭頂部だけよ」
真姫「なんかこう、物足りないというか……こう……モヤっとするというか……」
真姫「うまく言葉にできないわね……」
凛「ふーん」
真姫「ナニヨ!」
真姫「うぅー…あぁもう!私だってよく分かんないのよー!」
凛「真姫ちゃん落ち着いて」
真姫「落ち着けるわけないじゃない!!」
凛「」ビクッ
真姫「ここ何日か、みんなの頭を借りてきたけど…何かが違ったの!!きっと髪質の良さとか、触った時の反応とか、そんなものじゃないの!!」
真姫「花陽の頭の上に置いていた時にしか味わえない感覚があったのよ!その差がどうしても埋まらない!!」
真姫「こんなの逆ギレだって分かってる!でも凛、もう私はこうするしか……できないのよぉ!!」タタタッ
凛「まきちゃーん!!待ってよー!」タタッ
絵里「あれから真姫もだいぶ反省してるみたいだし、たまには花陽にも触らせてあげていいんじゃない?」
希「そうやね」
にこ「甘いわねあんたら……ある種の中毒症状よ、アレは。まだ早いわ」
絵里「中毒なら、無理に引き剥がすのは根本的な解決にならないわ。違う?」
希「たまにはガス抜きもせんと、真姫ちゃんだっていつか爆発…」
真姫「トメナイデ!」ドドドド
凛「待つにゃーー!!」ドドド
希「もうしてた」
にこ「ぬぁんでよ!そうなるのはまだ早いでしょ!何日目よ!?」
凛「ちょうど良いところに!真姫ちゃん止めてっ!」
絵里「えぇっ!?でも行かせてあげれば、満足しておさまるんじゃ……」
にこ「却下!今2人を会わせたら、解決の前に花陽はつるつるのハゲにされちゃうわ!」
希「リミッター的ななにかを外しちゃった感じ…確かにまずいかも」
にこ「希!絵里!3人で抑え込むわよ!」
希「了解!」
絵里「…やるしかなさそうね」
にこ「突撃ぃい!」
絵里「真姫!止まって!」
真姫「オコトワリシマス!」
ズンッ!
にこ「うぐぅ……!」ズザザザ
絵里「重たっ!」ズザザザ
凛「やたら速いだけじゃなくてパワーもやばいにゃ!」
にこ「止めきれないにこぉ……!」
絵里「でも十分よぉ…!」
希(2人とも、損な役回り押し付けてごめん)ヌッ
希(でもこれでおしまい。安心しとき、真姫ちゃん。花陽ちゃんも、他の誰も、ハゲさせはせんよ……!)
希(わしわしマーー……っ)バッ!
真姫「デッショー」しゃがみっ
希(ク)スカッ
ゴチンッ!
にこのぞえり「~~~!?!?」ジタバタ
真姫「」ユラァ
絵里「あっ、だめ……まき……」
希「南無三……」
にこ「そそ、そんな怖い顔しないで!ほんの冗談よ!ほら、にっ、にっこにっこ」
キャーー!
~そんなことは知らない人たち~
穂乃果「こうかなー?」ポンッ
花陽「穂乃果ちゃん、私の肩に何かついてる?」
穂乃果「ううん。真姫ちゃんの気持ちを考えてたんだ」
穂乃果「花陽ちゃんの頭に手を乗せるの、なにか理由があるんじゃないかなって」
ことり「あ、やっぱり気になるよね」
海未「ええ。あの様に無意識に花陽の頭を触っているのであれば、何かしら理由があるのでしょう」
花陽「肩でいいの?頭の方がよくない?」
穂乃果「ここで私が触ったら、真姫ちゃんに我慢させた意味がなくなっちゃうでしょ?」
花陽「あ、そっか。そうだね」
海未「穂乃果にしては珍しく考えていますね」
穂乃果「一言余計だよ!」
穂乃果「うーん……ダメだ、肩じゃよく分かんない」
ことり「頭以外で、同じように触れて落ち着く場所で試してみた方がいいかも」
穂乃果「落ち着く場所…胸とか?」
海未「希じゃあるまいし、それはないでしょう」
穂乃果「背中とかどう?頼れる女の!って感じで」
花陽「絵里ちゃんくらい背が高ければ、それもアリなのかも」
穂乃果「ほっぺたはどうかなー」プニプニ
花陽「ふふ、穂乃果ちゃん、くすぐったいよぉー」
ことり「どう?」
穂乃果「楽しかった!でも違う気がする!」
海未「手なんてどうです?」
穂乃果「手かー。よし!花陽ちゃん、ここで私と握手だ!」キリッ
花陽「遊園地のコマーシャルみたいだね」
ギュッ
穂乃果「……!」
花陽「……?穂乃果ちゃん、どうかしたの?」
穂乃果「なんかこれ、すごく良い!」
花陽「そ、そう?」
穂乃果「花陽ちゃんの手、柔らかくてあったかいよ!」
花陽「えへへ…なんだか照れちゃうね」
穂乃果「それとね。こうしてると、花陽ちゃんがμ'sの一員になった日のことを思い出して嬉しくなるんだ」
穂乃果「あのときも屋上で、こうやって手を握ったよね!」ニコッ
花陽「そうだったね。あのときは本当にありがとう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「お礼を言うのはこっちの方だよ!ポスター貼ったり、チラシ配っても全然メンバーが集まらなくて」
穂乃果「初めてライブをした時だってそう!3人でからっぽの講堂を見たとき、もうダメかもしれないって思ったんだよ?」
穂乃果「でも、花陽ちゃんが、来てくれた、から……っ」ポロポロ
花陽「ほ、穂乃果ちゃん!?大丈夫?」
穂乃果「……っ、ごめん。あの時引っ込んだ分が今になって出ちゃったみたい」グスッ
ことり「最初の、お客さんだったよね」ポロポロ
海未「メンバーとしても、初めて…すみません…私たちもちょっと」ダバー
花陽「海未ちゃんのそれはちょっと!?そんなに泣いたら干からびるよ!?」
穂乃果「ごめん、結局真姫ちゃんの気持ちは分からなかったね」
ことり「そうかなぁ?ことりは今ので分かったよ」
海未「私も分かりました」
花陽「2人ともすごい!私はさっぱりだよぉ……」
穂乃果「う、うそ…っ!?なんで分かったの?」
海未「これは穂乃果には、分からなくても仕方ありませんよね?」
ことり「ねー?」クスッ
穂乃果「えぇー!なにそれ!ずるいよー!ヒントちょうだい!」
ことり「最初は特別、です♪」
穂乃果「最初……?」
ドドドドドド
真姫「!!」
凛「ああああ!とうとう終わりの時がやってきたにゃ!」
花陽「凛ちゃ…真姫ちゃん?その姿は一体!?」
海未「やはりこうなりましたか…!」
海未「穂乃果!囮になって時間を稼いでください!」
穂乃果「ええー!?時間稼ぎって」チラッ
真姫「」ゴゴゴゴドドド
穂乃果「無理ムリムリ!絶対無理だよ!本能解放してるって、目から青い火ふいてもおかしくないよ!!」
ことり「穂乃果ちゃん頑張って!」
海未「今こそファイトですよ!」
穂乃果「応援されてもー!」
海未「真姫ー!穂乃果が、さっき花陽のことをいじめていましたよー!」
真姫「」ギラン
穂乃果「ひぇっ!こっち向いた!普段よりだいぶ単純だ!」
真姫「ヤメナサイ!」グワォ!
穂乃果「いじめてないよぉー!!もう、なんとかなれー!!」
ウワーン!
海未「くっ、穂乃果……あなたの犠牲は、無駄にしません!今のうちに少し離れましょう!」
凛「ぜ、全然、そんな感じじゃなかったけど……凛もようやく、休めるかにゃー…」ゼーハー
凛「聞いてよ!ひどいんだよー!真姫ちゃんが凛の頭にチョップして、それから走り出しちゃったの!」
凛「にこちゃんと絵里ちゃんと、希ちゃんが止めに入ってくれたんだけど……それもかわされて、追跡不能にされちゃったんだ!」
花陽「つ、追跡不能?」
凛「後で見てみれば分かるよ!」
ことり「き、気になっちゃう……でも、今は真姫ちゃんだね」
花陽「うん。なんとかしなくちゃ!」
穂乃果「見よう見まね!わしわしマックス!」
真姫「」ヒョイッ
穂乃果「うわぁ!?」ステンッ
凛「さっき本家が当たらなかったのに、そんなの当たるわけないよー!」
穂乃果「先に言ってよー!!」
<ぎぃいやぁあああああああ!!
ことり「穂乃果ちゃーん!?」
海未「ことり!今行ってはダメです!」
凛「断末魔のようなものが聞こえたにゃ…なむー…」
<カッテニコロサナイデー…
花陽「い、生きてはいるみたいだけど、大丈夫かな……?」
海未「単刀直入に言います。花陽、あなたが真姫を止めてください」
花陽「私が?でも、どうすれば……」
海未「難しいことはありません。とにかく、強い想いをぶつけてください」
ことり「大丈夫!私たちの考えが正しかったら、きっと真姫ちゃんは花陽ちゃんを攻撃しないはずだから!」
花陽「それはどうして?」
ことり「だって、花陽ちゃんは真姫ちゃんにとって……初めての好きな人だから!」
花陽「えっ」
凛「!?」
凛「えっ?えっ?どういうこと!?凛しらない!かよちんと真姫ちゃんは、でぇきてるぅってやつなの?だから妙にべたべた触るの!?」
海未「巻き舌はやめなさい。ことりも、誤解を招くような言い方をしない!」
花陽「で、でぇきてぇる……?えっ、えっ?」
海未「何もできてないです。落ち着いてください」
ことり「すー、はー……ことりたちも、さっきの握手で気付いたことなんだけど」
ことり「真姫ちゃんの最初の友達って、花陽ちゃんだったんじゃないかな?」
ことり「少なくとも、音ノ木坂に入学してからの友達ってくくりでは、一番の♪」
ことり「花陽ちゃんがあの日の夕方に屋上に来たとき、凛ちゃんと真姫ちゃんに引きずられてきたよね?」
花陽「うん。……大変でした。特に階段は」チラッ
凛「な、なつかしいにゃー(棒)」ダラダラ
ことり「その時は特に疑問に思わなかったんだけど、今思えば不思議だなーって」
ことり「穂乃果ちゃんが、アイドルやろう!って誘う時はいつもひとりでいた真姫ちゃんが、あの日は3人一緒だったんだもん」
海未「間に何かあり、そこで真姫と花陽が友達になった。そう考えるのが自然です」
海未「凛の可能性もありましたが、あの時点の真姫との競い方は友人のそれに見えなかったので外しました。…どうでしょう?」
花陽「たしかに、前の日に生徒手帳を届けにお邪魔して、お話したり…その日も、一緒に歌の練習をしたよ」
花陽「真姫ちゃんのお母さんも、高校に入ってから家に遊びに来る子は初めて、なんて喜んでくれました。だから、2人の考えは合ってると思う」
ことり「やったぁ!」
海未「それなら!」
花陽「でも、それだけじゃ…私が今の真姫ちゃんを止められる理由としては、弱いような気がするんだ……大丈夫かなぁ」
凛「かよちん…」
ことり「ううん、そんなことないよ!」
ことり「最初は特別!何人友達ができても、最初にできた特別な友達には、なかなか勝てないものだよ!」
ことり「ことりもね、μ'sのみんなのこと、同じくらい好きだけど…やっぱり穂乃果ちゃんが一番だもん!」
海未「ことりの言う通りです。私も、無意識に穂乃果とことりを贔屓してしまう事があります」
凛「凛も、誰にでも優しいかよちんのこと、一番大好きにゃー!」
海未「…まあ、私自身は所詮、2番目以降でしたが」ボソッ
花陽「海未ちゃん、何か言った?」
海未「なんでもありませんよ」
海未「先程も言った通り、あなたのすべき事は真姫に想いをぶつけるのみ」
ことり「今から真姫ちゃんを花陽ちゃんの最初の友達にするのは、タイムマシンでも使わない限り無理だと思うけど……」
海未「一度は心を開かせた、花陽にならできるはずです。いえ、花陽にしか成し得ません!」
ことり「みんなに平等に優しくできるその気持ちを、今は真姫ちゃんにだけ向けてほしいな!」
ことり「初めての想いに、釣り合うように!」
花陽「初めての、想い……」
花陽「……やってみます!」
タタタタ…
海未「行きましたね」
ことり「ちょっと長くなっちゃったけど、穂乃果ちゃんも無事だと良いなぁ」
海未「大丈夫ですよ。ああ見えてタフですから」
ことり「そうだよね!」
凛「ねえねえ!」
海未「どうしました?」
凛「凛には何かないの?凛も真姫ちゃんを止めてあげたい!」
海未「そうですね。1つだけ凛にもできることがありますよ」
凛「ほんとう!?教えて欲しいにゃ!」
海未「それは──」
海未「黙って2人の行く末を見届け、脳を破壊されることです」
凛「…はぁ?」
海未「ですから、あなたにできる唯一のことは、花陽が真姫を止めるのをただ見守り、脳を破壊されるだけです」
凛「ちょっと凛にはイミワカンナイにゃ」
海未「……分かりました。説明します」
海未「ことりが「最初は特別!」と言ったでしょう?」
海未「これ、実は過去に起きた騒動にも同じように当てはまるんです」
ことり「そ、それって、もしかして」アワワワ
海未「ことりの留学の件で、μ'sがバラバラに崩壊しかけた時です」ニッコリ
ことり「ぴぃぃっ!や、やぶ蛇!」ビックゥ!!
海未「あの時もことりは言いました。穂乃果に1番に相談したかったと。穂乃果は初めてできた友達だよ、と」
海未「そして今回も、花陽は真姫にとって初めてできた友達。ことりと穂乃果と同じです」
海未「となると、凛のポジションが誰に置き換わるか。言わなくても分かるでしょう?」
凛「い、いやだ!絶対いやだにゃ!!凛たちは2年生とは違うにゃ!!」
海未「私だって、知りたく無かったんですよ。こんな残酷な真実」
海未「どうあがいても、私はことりにとって2番目より後ろなんだと。最初に相談したいのはあくまで穂乃果であって、私ではないんだと」
海未「3人対等だと思っていたのに、代わりに事情を聞かされた私が、どれだけ絶望したことか…!」
ことり「うぅ~!ごめんなさい!本当にごめんなさぁぁぁいっ!!!」ガクガクブルブル
海未「何を謝っているのですか?ことり」
ことり「えっと、その……う、ぅ海未ちゃんの気持ち、全然考えてなかったなって思って」
海未「……いいですよ、もう。気にしないで下さい」
海未「今は、とてもいい気持ちですから」ニコッ
凛(あ、これもうだめだにゃ)
ことり(凛ちゃんごめん、お詫びにことり、南やぶへびに改名するね……)
海未「さあ凛!花陽がこのゴーストゲームを解決に導くのを見て、共に脳を破壊されましょう!」ガシッ
凛「うえぇーん!!嫌にゃー!よすにゃー!!」ジタバタ
ヨーセッテ ハンタイ サレテモ トマレナイ ゴメン♪
テンープレー ダッテ イッショナラ ヌリカワルー♪
花陽「真姫ちゃん!!」ザッ!
真姫「!」クルッ
穂乃果「は、花陽ちゃ~ん…おそいよー……」ボロッ
花陽「(ほのまげが、頭のてっぺんに…モヒカンみたいになっちゃってる)ごめんね、すぐ助けるから!」
真姫「…………ハナヨ」
花陽「真姫ちゃん!聞いて!」
花陽「私…花陽にとって、最初のお友達は凛ちゃんでした。長い間ずっと、特別な存在でした」
花陽「でもね。凛ちゃんの応援があっても、それだけじゃ屋上まで行けなかった。勇気が足りなかったんだ」
花陽「きっかけはね、真姫ちゃんだったんだよ?」
花陽「真姫ちゃんは初めてお話してからすぐに、違うやり方で背中を押してくれた。同じように引っ張ってくれた」
花陽「μ'sに入れてもらってからだって、真姫ちゃんがいなかったら…今みたいには歌えていなかったと思う。もっと下手になっていたかもしれない」
花陽「だから……真姫ちゃんは、花陽の初めてのお友達ではないけど、同じくらい…それ以上に特別な人なの」
花陽「花陽は真姫ちゃんのことが好き。大好き。大好きなの!」
凛「にゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」ピシピシ
ことり改めやぶへび(凛ちゃんの頭にBiBi…もといヒビが!)
花陽「真姫ちゃんが私の頭に手を乗せてくれることが嬉しい。なんなら少しくらい髪の毛をむしっても構わない」
花陽「だから、お願い。これ以上みんなを傷つけないで…」
モギュ…
凛「ブルーロック!!」ピピピピピ…ガシャーン!
やぶへび「ジグソーパズルみたいに飛び散っちゃったよぉ~!」
真姫「……」
穂乃果「……」ドキドキ
花陽(これでダメだったら……)
モギュット
花陽「!!」
真姫「ま、まったく、花陽ってば」
真姫「人前でそんなこと言うなんて、本当に恥ずかしいわね……///」
花陽「真姫ちゃん……!」パァァ
花陽「元に戻ってくれて、よかったぁ……!」ギュウッ
真姫「ちょっ、花陽!やめなさいよ!まだみんな見てるじゃないっ!///」
穂乃果「ホントに戻ったの~?いつもの真姫ちゃんは抱きつかれたら「暑苦しいわね!」とか言って引き剥がすのにぃ~?」ニヤニヤ
真姫「べ、別にいいでしょ!?なぜか体に、力が入らな……穂乃果、イメチェンしたの?」
穂乃果「真姫ちゃんがやったんだよ!?」モヒカント
凛「あれだけ暴れれば当然だにゃ」カシャカシャカシャーン
海未「凛、気分はどうですか?」
凛「超越視界(メタ・ビジョン)を会得したよ。パズルはギリギリを試すのもいいものにゃ~」
やぶへび(凛ちゃん、それ絶対手遅れだよ。その壊れたピースは、組み直せたように見えて元通りになってないタイプの……あぁ~…!)
あの後、私はみんなに1人ずつ謝ったわ
事が事だけに退部も覚悟してたけど、許してもらえたみたい
感謝してもしたりないわね
無意識に花陽の頭を触りすぎてしまうクセは、とりあえずそのままでいいと言ってくれた
凛と海未は、なぜか時々私たちを遠くから眺めるようになった
脳が壊れて再生するとかなんとか…
ことりはことりで「知らない方がいいよ」って言うし、やぶ蛇を名乗るし…イミワカンナイ
そのままでいいとは言われたけど…花陽の綺麗な髪を毟るわけにはいかない、触る場所はなんとか矯正するわ
万が一失敗したら、責任は取るつもりだから安心しなさい
何年かかっても元通りにしてみせるわ!
だって…私に音楽を続けさせてくれた、特別な人なんだもの(ポンポン)
おわり
~おまけ~
希「ウチ、ぶどうの気持ちが分かった気がする」
絵里「奇遇ね。私もバナナを理解したわ」
にこ「髪色的に?にこは黒いのよりさくらんぼがいいかなぁ~!」
にこ「…って、のんきなこと言ってる場合じゃないでしょーが!まともに動けないのよ私たち!」ガッチリ
希「まさか真姫ちゃん、髪の毛でここまで見事な縫合ができるとは……これ、ほどけるかな?」ガッチリ
絵里「ゴッドハンド真姫、略してゴ真姫ね」ガッチリ
にこ「ゴッ輝みたいに言わないでくれる?」
にこ「どうすんのよ…にこたち3人、一生さくらんぼのままじゃない」
絵里「ここは公平に、それぞれツインテール、ポニーテール、おさげを切断して分離を試みるというのはどうかしら?」
にこ「イヤよ!にこのトレードマークなのよ!?」
希「髪の長いウチが一番損してるような……平等と公平は違うんよ、えりち」
絵里「どのみち、誰もハサミ持ってないからすぐには切れないけど…」
希「事態の収拾を待つしかなさそうやねぇ……」
にこ「真姫ぃい……一本でも抜いたり千切れたりしたら、承知しないんだからぁ!」
おわり