2017/06/12 Gregg Keizer Computerworld
米Appleが先日発表した新型「iPad Pro」は、小さい方のモデルが9.7インチから10.5インチに変わった。この結果、今度のiPad Proのユーザーは、米Microsoftの「Office」アプリで文書の作成や編集の機能を無料では使えないことになった。
![【IT】新型iPad Pro、10.5インチ化でMS Officeアプリの無料対象外に【米Appleが先日発表した新型】 [無断転載禁止]©2ch.net ->画像>2枚](http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/481542/061200379/ph.jpg)
Credit: Apple
10.5インチの新型iPad Proは、2015年秋に登場した12.9インチの初代iPad Proと同じように、iOS用Officeアプリでは有料の区分に該当する。
Microsoftは、タブレットかコンシューマークラスかビジネス向けかの判断基準として、画面サイズを用いている。ボーダーラインは10.1インチだ。10.1インチ以下のiOSデバイスでOfficeアプリ(Excel、OneNote、Outlook、PowerPoint、Word)を使う場合、文書の作成や編集の機能も無料で使える。ただし、その成果物が「非商業的な使用を目的として」いることが条件だ。つまり、職場での作業や仕事向けの作業でなければ無料だ。
一方、10.1インチを超えるデバイスの場合、Wordアプリのライセンス規約によると、「モバイルデバイスに関する権利」が付いたOffice 365を契約していないユーザーは、既存の文書の閲覧と印刷のみが可能だ。10.5インチの新型iPad Proはこちらに該当する。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/481542/061200379/?ST=cm-hardware&P=2
商用目的で文書の作成や編集を行うには、Office 365の契約が必要だ。Microsoftのライセンス契約によると、商用利用の場合には、iOS用Officeのどのアプリのどの機能を使うかや、iPhone/iPad/iPad Proのどのデバイスで使うかにかかわらず、Office 365の中小企業向けプランや大企業向けプランの契約が必要となる。例えば、Office 365 Business Premium(米国ではユーザー1人当たり月12.50ドル)や、Office 365 Enterprise E3(同20ドル)などだ。
米国で提供されているコンシューマー向けプランのOffice 365 Personal(年70ドル)やOffice 365 Home(同100ドル)も、10.5インチのiPad ProでOfficeアプリを動かす権利が得られる。ただし、非商用利用に限られるのが落とし穴だ。
仕事関連のWord文書を10.5インチのiPad Proで編集するには、Office 365の商用プランの契約が必要だ。あるいは、業務関連のExcelスプレッドシートを閲覧する場合や、仕事でPowerPointのスライドを見せたりする場合も同様だ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/481542/061200379/?ST=cm-hardware&P=3
こうしたライセンス規約は2014年11月から導入されているものの、エンドユーザー(コンシューマーや企業の社員)のみならず、一部のIT管理者をもいまだに混乱させている。企業では、ライセンスを巡る混乱は、過失(主にライセンス不足)の原因になることから、特に危険だ。Microsoftに監査を求められた時に、支出が発生する恐れがある。
混乱の原因は、Microsoftが展開している「フリーミアム」戦略があいまいなことだ。Microsoftは、iOS用Officeアプリは「無料」だと繰り返しうたい、万人にとって無料だという印象を与えている。しかし実際には、一部のユーザーにのみ該当する話だ。すなわち、コンシューマーで、かつ画面が10.1インチ以下の場合だ。
Officeアプリで業務関連の作業を行うには、会社が契約したOffice 365のライセンスがそのユーザーに適用されていなくてはならない。一般社員から管理職まで、あらゆるレベルの人が頭に入れておくべき重要なポイントだ。特に、BYODを認めている場合や、管理対象外のデバイスがある場合に重要だ。
10.5インチのiPad Proを購入した社員が、「無料」というMicrosoftの触れ込みから、これまで使っていた9.7インチのiPadと同じように、今度のモデルもOfficeアプリが無料で使えると誤解する可能性はある。それが無理だと分かった時には、IT部門に問い合わせが来ることになりそうだ。
(了)
翻訳:内山卓則=ニューズフロント
記事原文(英語)はこちら http://www.computerworld.com/article/3200205/apple-ios/theres-no-office-free-ride-on-apples-new-105-in-ipad-pro.html