「父なる白い矢」の像の前で礼拝を行う「夜明けの谷」の霊的指導者の1人。
ギャラリー:宗教団体「夜明けの谷」の写真21点
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/gallery/090700361/
1959年設立、世界に600の寺院
未来都市を思わせるブラジルの首都ブラジリアから約1時間。衛星都市プラナルティナの一角に、ブラジルの宗教共同体の拠点「バーレ・ド・アマニェセール」がある。ポルトガル語で「夜明けの谷」という意味だ。
この場所はちょっとしたテーマパークのように見える。実物がある場所を訪れなくても、世界の驚異の建造物のレプリカを見られるのだ。湖の岸辺にある複合施設に立ち並ぶのは、ピラミッド、宇宙船のような寺院、六芒星形の祈祷所、そして楕円形の彫刻群だ。
わけがわからなくなってしまいそうな場所だが、決してやみくもに建てられたものではない。キリスト教、ヒンズー教、ユダヤ教、インカ、古代エジプトなど、多様な宗教や文明から教義や信条を取り入れた、すべてを包含する難解な教えを反映するように、綿密に設計されているのだ。
夜明けの谷の信者によると、人類の文明を発展させたのは、3万2000年前にやって来た地球外生命だという。彼らは、その後もさまざまな文化や時代に現れ、地球に再来した。霊媒と呼ばれる夜明けの谷の教団メンバーたちは、自分たちが、霊的な存在である「ジャガー」の最も新しい姿であると信じている。
夜明けの谷は1959年、「ネイバおばさん」ことネイバ・チャベス・セラヤによって設立された。4人の子どもを持つ寡婦だったネイバは、当時リオデジャネイロから首都を移転するため建設中だったブラジリアで、トラック運転手として働いていた。そこで超常現象を体験するようになり、やがてそれを地球外の霊的存在の到来だと信じるに至った。
ネイバは、主に「パイ・セタ・ブランカ(父なる白い矢)」という霊に導かれたという。この存在は、彫像や絵画では南米先住民の族長の姿で表現されている。
ブラジル人写真家であるガイ・クリスト氏は、幻想的な夜明けの谷の由来や霊媒のカラフルな衣装に魅力を感じ、さまざまな儀式を取材した。何時間も祈りの言葉を唱えながら湖のまわりを回る儀式もあった。
通常は、2人の霊媒がペアになって儀式に臨む。「アパラ」と呼ばれる受け手の霊媒は、友好的な存在であろうと問題のある存在であろうと、霊をみずからのなかに降ろす。そして、教化役の霊媒はその教えを伝え、霊が霊界に戻るのを助ける。霊媒は、この儀式によって前世の罪をあがなえると信じられている。
アフリカ系ブラジル人の宗教「ウンバンダ」の信者であるクリスト氏は、この儀式を撮影しているとき、名状しがたいエネルギーを感じた。「アフリカやアジア、ブラジルで多くの宗教を見てきましたが、何かとつながっているという感覚になったのは、そのときが初めてです」とクリスト氏は語る。「めまいがして、寺院を出なければなりませんでした」
米インディアナ大学インディアナポリス校の宗教学准教授であるケリー・ヘイズ氏によると、夜明けの谷はブラジルの中でも特に急速に広まっている新興宗教で、世界中に80万人の信者と600の寺院を抱えているという。
しかし、ブラジルの主流派や宗教コミュニティは、夜明けの谷やその他のスピリチュアル団体をカルトに分類し、避けている。さらに、「谷」のメンバーを改宗させようと、キリスト教福音派が近くに教会を建てたため、メンバーと福音派のあいだでは緊張が高まっている。ヘイズ氏は、「福音派の人々は、『谷』のメンバーが悪魔の影響を受けていると信じています」と言う。
ヘイズ氏は、夜明けの谷を無害なカルトだと片づけるのではなく、設立の背景まで考えるべきだと述べる。1950年代に生まれたこの教団は、ブラジリアの建設を支えた貧しい農民や移民たちに広まった。「当時のブラジリアは、新しい世界に向けて飛躍し、近代国家に生まれ変わろうとするブラジルの象徴でした」。しかし、あまりに整然としすぎたコンクリートの町は、過密と犯罪に悩む、無愛想なディストピアになってしまった。
「谷」がもたらす霊的な癒やしが、ブラジリアに幻滅した人々を救っているという一面もある。ヘイズ氏は、「『谷』が人々に与える癒やしとは、人生の語り直しです」と説明する。「多くの人々は、その物語によって、自分の人生は自分のものだという感覚、そして仕事によって正義や平等を実現できるという感覚を得るのです」
9/10(月) 7:40配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180910-00010001-nknatiogeo-s_ame
ギャラリー:宗教団体「夜明けの谷」の写真21点
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/gallery/090700361/
1959年設立、世界に600の寺院
未来都市を思わせるブラジルの首都ブラジリアから約1時間。衛星都市プラナルティナの一角に、ブラジルの宗教共同体の拠点「バーレ・ド・アマニェセール」がある。ポルトガル語で「夜明けの谷」という意味だ。
この場所はちょっとしたテーマパークのように見える。実物がある場所を訪れなくても、世界の驚異の建造物のレプリカを見られるのだ。湖の岸辺にある複合施設に立ち並ぶのは、ピラミッド、宇宙船のような寺院、六芒星形の祈祷所、そして楕円形の彫刻群だ。
わけがわからなくなってしまいそうな場所だが、決してやみくもに建てられたものではない。キリスト教、ヒンズー教、ユダヤ教、インカ、古代エジプトなど、多様な宗教や文明から教義や信条を取り入れた、すべてを包含する難解な教えを反映するように、綿密に設計されているのだ。
夜明けの谷の信者によると、人類の文明を発展させたのは、3万2000年前にやって来た地球外生命だという。彼らは、その後もさまざまな文化や時代に現れ、地球に再来した。霊媒と呼ばれる夜明けの谷の教団メンバーたちは、自分たちが、霊的な存在である「ジャガー」の最も新しい姿であると信じている。
夜明けの谷は1959年、「ネイバおばさん」ことネイバ・チャベス・セラヤによって設立された。4人の子どもを持つ寡婦だったネイバは、当時リオデジャネイロから首都を移転するため建設中だったブラジリアで、トラック運転手として働いていた。そこで超常現象を体験するようになり、やがてそれを地球外の霊的存在の到来だと信じるに至った。
ネイバは、主に「パイ・セタ・ブランカ(父なる白い矢)」という霊に導かれたという。この存在は、彫像や絵画では南米先住民の族長の姿で表現されている。
ブラジル人写真家であるガイ・クリスト氏は、幻想的な夜明けの谷の由来や霊媒のカラフルな衣装に魅力を感じ、さまざまな儀式を取材した。何時間も祈りの言葉を唱えながら湖のまわりを回る儀式もあった。
通常は、2人の霊媒がペアになって儀式に臨む。「アパラ」と呼ばれる受け手の霊媒は、友好的な存在であろうと問題のある存在であろうと、霊をみずからのなかに降ろす。そして、教化役の霊媒はその教えを伝え、霊が霊界に戻るのを助ける。霊媒は、この儀式によって前世の罪をあがなえると信じられている。
アフリカ系ブラジル人の宗教「ウンバンダ」の信者であるクリスト氏は、この儀式を撮影しているとき、名状しがたいエネルギーを感じた。「アフリカやアジア、ブラジルで多くの宗教を見てきましたが、何かとつながっているという感覚になったのは、そのときが初めてです」とクリスト氏は語る。「めまいがして、寺院を出なければなりませんでした」
米インディアナ大学インディアナポリス校の宗教学准教授であるケリー・ヘイズ氏によると、夜明けの谷はブラジルの中でも特に急速に広まっている新興宗教で、世界中に80万人の信者と600の寺院を抱えているという。
しかし、ブラジルの主流派や宗教コミュニティは、夜明けの谷やその他のスピリチュアル団体をカルトに分類し、避けている。さらに、「谷」のメンバーを改宗させようと、キリスト教福音派が近くに教会を建てたため、メンバーと福音派のあいだでは緊張が高まっている。ヘイズ氏は、「福音派の人々は、『谷』のメンバーが悪魔の影響を受けていると信じています」と言う。
ヘイズ氏は、夜明けの谷を無害なカルトだと片づけるのではなく、設立の背景まで考えるべきだと述べる。1950年代に生まれたこの教団は、ブラジリアの建設を支えた貧しい農民や移民たちに広まった。「当時のブラジリアは、新しい世界に向けて飛躍し、近代国家に生まれ変わろうとするブラジルの象徴でした」。しかし、あまりに整然としすぎたコンクリートの町は、過密と犯罪に悩む、無愛想なディストピアになってしまった。
「谷」がもたらす霊的な癒やしが、ブラジリアに幻滅した人々を救っているという一面もある。ヘイズ氏は、「『谷』が人々に与える癒やしとは、人生の語り直しです」と説明する。「多くの人々は、その物語によって、自分の人生は自分のものだという感覚、そして仕事によって正義や平等を実現できるという感覚を得るのです」
9/10(月) 7:40配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180910-00010001-nknatiogeo-s_ame