mRNAワクチンは長年の科学的知見の積み重ねによって得られた画期的な予防薬だといえます。
実際、人口(約900万人)の6割近くが2回の接種を完了したイスラエルでは、
1日あたりの新規感染者数が38人、死亡者数が1人とほぼ収束しています
(5月13日時点の7日間移動平均。1月のピーク時には、それぞれ8624人、65人)。
また、横浜市立大学が先日発表した研究結果によれば、ファイザー製ワクチンを2回接種した人の9割以上が
すべての変異ウイルスに対して中和抗体を産生していました。
医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に発表された論文では、
ファイザー製ワクチンは、イギリス型・ブラジル型に対しては従来型に対する効果とほぼ変わらず、
南アフリカ型に対してはやや効果は低下するものの十分だったとしています。
このようなポジティブな結果が出ているからこそ、なおさら日本のワクチン接種の遅さが問題となっています。
5月14日時点で人口100人あたりの累計接種回数は4.4(イスラエル116.3、イギリス82.1、アメリカ79.7)、
2回接種完了人数は1.24(イスラエル56.23、イギリス28.33、アメリカ35.78)で、世界レベルで見て遅いのは間違いありません(出典は日本経済新聞社)。
これだけ差がついたのは、端的に言えば、接種開始が遅かったからでしょう(日本2月17日、イスラエル12月20日、
イギリス12月8日、アメリカ12月14日)。世界的なワクチンの争奪戦が起こった中で確保が遅れ、承認にも時間がかかったのが原因です。
その背景には、いくつもの深刻な問題が重層的に重なっています。
第一に、もともと日本では国民の間に「ワクチン忌避」の傾向が根強くあること。
たとえば子宮頸がんワクチンのように国際的に安全性が認められているワクチンについても、
接種後の有害事象(ワクチンが原因ではないものも含めたあらゆる好ましくない症状。
そのうち、接種と因果関係があるものが副反応。第37回参照)が大きくメディアで取り上げられ、ワクチン忌避が助長されてきた歴史があります。
これは現在のコロナワクチンの報道でも繰り返されているように感じます。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65311