株、値幅縮小が示すアベノミクス離れ 支持率急落もスルー
日本株の「アベノミクス離れ」が進んでいる。安倍晋三首相の友人が理事長を務める「加計学園」の学部新設を巡って政府は混乱しており、内閣支持率は急落している。
安倍政権の経済政策であるアベノミクスに沸いていたころなら、支持率急落は株式市場で投資家を慌てさせる材料になりかねなかったが、今は相場の反応は限られている。
株式市場で国内の材料への関心が低下し、米国頼みの構図が一段と強まっているのは日経平均の値幅(高値と安値の差)の縮小からも読み取れる。
21日午前の日経平均株価は前日比46円安の2万0183円と反落した。米原油先物相場の下落などをきっかけに20日の米国株が下落したのが重荷だった。
第2次安倍政権の発足直後である2013年の日経平均の日中値幅の平均は216円で、その後も年平均は200円前後が続いていた。
ところが17年はここまでの平均が148円にとどまる。
日中値幅の縮小は、取引開始から終了までの時間の相場変動の乏しさを意味する。裏返せば取引開始の時点で株価がその日全体の動きを決めてしまっている面があるといえる。
岡三証券の大場敬史投資戦略部長は「日経平均は、取引開始時点までに出てきた米国発の材料で方向性が決まってしまう傾向が強まっている」と指摘する。
値幅の縮小が特に顕著なのが午後の動きだ。午後の日経平均の値幅は、13年の平均は143円で16年まで100円を上回っていた。
それが17年に入るとここまで81円に縮小している。5〜6月に限ると67円まで縮まった。午前の、それも取引開始前に決まった相場の方向性は午後にも変わらない傾向が強まる。
ここにきて日中の日本株の変動が小さくなっているのは「先行きの不透明感が増している米国経済への投資家の関心がより高まっているため」
(いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員)との声があった。
国内への関心が低下していることから、内閣支持率が急落しても相場は動かない。
大和住銀投信投資顧問の門司総一郎経済調査部部長は相場の反応が鈍いのは「支持率低下は景気の悪化が理由ではないため」とみる。
国内景気は堅調で、政治の混乱があっても株価にはすぐには響かないというわけだ。
「急落したといっても支持率は5割近くを維持している」(ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘調査部長)との見方もあった。
国内景気や国内企業の業績も、米国の経済成長頼みの色彩は濃い。
朝までに取引が終わる前日の米国の金融・資本市場の動きが、日本株の方向を決める傾向は簡単にはなくならないだろう。〔日経QUICKニュース(NQN) 高橋徹〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL21HCI_21062017000000/