新型コロナウイルスが猛威を振るう中にあって、科学技術で世界をリードする国が市民に感染予防のマスク着用の
必要性を説得できないのであれば、それは深刻な問題だ。
7月4日の独立記念日を前に、米国が直面する現実はまさにそうしたものだ。1日当たりの感染者数が過去最多を
更新する中で、公衆衛生の専門家は十分な数の米国民がリスクを把握していないか、さらに悪いことには、
大統領・議会選の年にあって、政治的な視点から危機を捉える風潮があるのではないかと懸念している。
感染症専門医でデューク大学医学部准教授のキャメロン・ウルフ氏は「マスクが政治的な文脈で語られる現状は、
悲惨なものとしか言いようがない。自然に収束することはないという事実に目覚めるべきだ」と語った。
科学と公共政策が論争の的である場合、党派色が色濃く出てくる。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば
、科学に関する政策策定には科学者の知見を反映させるべきだとする回答は、
民主党支持者や同党寄りの無党派層で約73%だったのに対し、
共和党支持者や同党寄りの無党派層では43%にとどまった。
一方、感染拡大を巡ってこのように対照的な見解を増幅させるメディアの情報発信の台頭がある。
ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール)ショーレンスタイン・センターが公表した3月の全米調査結果では、
保守系メディアの視聴者は公衆衛生専門家について、トランプ大統領を攻撃するため感染の深刻さを誇張していると信じ、
有望な治療法などに疑問を投げ掛ける傾向が一段と強いことが示された。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-03/QCVBXODWX2Q101?srnd=cojp-v2