2018年2月23日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201802/CK2018022302000132.html
ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)での影響力があるように見せようと、固定読者を示す「フォロワー」や、共感を示す「いいね」などを売買する不正なビジネスが世界に広がっている。米国では販売業者は「フォロワー工場」などと呼ばれ、偽りのフォロワーを販売した詐欺の疑いで摘発する動きも出てきた。 (吉田通夫)
「ツイッター千人フォロワー購入 三千五百円」「インスタグラム 千いいね 千五百円」「ユーチューブ動画再生数一万回 二千二百円」−。インターネットで「フォロワー 購入」と検索すると、販売業者が数多く表示される。
フォロワーの売買に詳しい関係者によると、こうした業者の多くは、コンピューターのプログラムを使って、実在する複数のアカウント名やプロフィルを組み合わせて架空の利用者を偽造。それを大量に販売しているという。
こうした業者が後を絶たないのは、お金を払ってでもフォロワーなどを増やしたい人がいるためだ。SNSで影響力を持つ発信者は「インフルエンサー」と呼ばれ、企業が商品広告を依頼するなど現金収入につながる。また、自分の影響力を誇示したい政治家や芸能人らが購入しているケースもあるとされる。
SNSでの不正行為に各国の当局も対応を始めた。昨年六月、中国で人気のSNS「WeChat(ウィーチャット)」の「いいね」を増やすビジネスをしていた中国人三人が、大量のスマートフォンを密輸した疑いで摘発された。また、米国・ニューヨーク州は一月下旬、架空のフォロワーを売った詐欺の疑いで、販売業者の一つを摘発すると発表した。
SNSの運営側も、フォロワーなどの売買が横行するとサービス全体が信用されなくなるため、規約などで禁じている。インスタグラムを運営するフェイスブックジャパンの長谷川晋(しん)代表取締役は「不正をなくしていく努力を続ける」と語る。しかし、取引を分かりにくくする偽装が巧妙化しており、不正の特定は難しいケースが多いという。
◆真偽調べるサービスも
SNSの不正に対応するため、影響力の真偽を調べるネット上のサービスもある。「Fake Follower Check(フェイク・フォロワー・チェック)」では、特定の人物らのツイッターを指定すると、つぶやきがないなど複数の条件に当てはまるフォロワーは、不正につくられた可能性がある「Fake(架空)」と判断する。
自らはつぶやかない利用者らもいるため、だれでも一定の「架空」と判断されるフォロワーを含む。しかし「架空」の割合が半分を超えた場合などは、「不正ではないかという参考情報にはなる」(SNS関係者)と言う。
例えば昨年十月に結党した立憲民主党のツイッターのフォロワーが急激に伸び、「買ったのではないか」と臆測が飛び交った。しかしチェックの結果、「架空」は一月時点で11%。自民党広報の18%、公明党26%よりも少なかった。
ネットに詳しい国立情報学研究所の大向一輝(おおむかいいっき)准教授は「今は評判や収入に結び付くため不正も起きやすい。一般利用者もフォロワー数などを過信しないよう注意するべきだ」と話す。