https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180801-00053711-jbpressz-pol
日本政府の官僚はユダヤ人虐殺を実行したナチスの官僚や親衛隊と同じなのか? いまの日本は、ナチス・ドイツのようになる危機が深まっているのか? ──朝日新聞(7月29日付朝刊)の長文の社説を読んで、こんな疑問を感じさせられた。
同時に自分の気に入らない相手を即座にナチスにたとえる朝日新聞の年来の手法に、同じ日本の新聞界で長年活動してきた一員として、恥ずかしいと同時に情けない思いを抱いた。ジャーナリズムや報道機関のあり方を再考させられる機会ともなった。
■ 2倍の長さの社説で安倍政権を非難
まず、その社説の内容を紹介しよう。
見出しは「わたしたちの現在地 深まる危機に目を凝らす」である。通常、全国紙では1日分のスペースに2本の社説を掲載する。だが、どの新聞も時折、とくに強く主張したい社説を1本だけ掲載することがある。だから、通常の社説の2倍の長さとなる。朝日新聞のこの社説もそんな長文社説だった。
趣旨は、一言でいえば安倍政権への非難である。その政権に仕える、つまり日本政府の行政機構で働く官僚たちの糾弾である。社説は以下のように始まる。
「うその答弁に文書の改ざん、言いのがれ、開き直り――。民主主義をなり立たせる最低限のルールも倫理もない、異常な国会が幕を閉じて1週間になる。
豪雨被害、そして酷暑に人々の関心は移り、不都合なもろもろを、このままなかったことにしてしまおうという為政者の思惑が、少しずつ、しかし着実に世の中を覆っていく。
私たちの日本社会はいま、危うく、きわどい地点にさしかかっているのではないか」
以上は、まず今会期の国会の進み方、終わり方への非難である。森友・加計に明け暮れた国会での安倍政権側の対応が民主主義のルールや倫理を破り、日本を危うくしている、というわけだ。
現在の国際情勢の論議などを脇におき、モリカケ問題に終始する野党に国民から批判の声があがっていることなどをまったく無視した主張だが、朝日新聞が与党側の態度を糾弾し、野党側の主張を全面的に支持することは、それなりに理解できる。いわば意見や見解の違いである。
しかし朝日新聞のこの社説は、このあと突然、日本の2018年の政権をドイツの1940年代のナチス政権に重ね合わせていくのだ。
■ 唐突にナチス親衛隊が登場
(略)
■ 中国も日本を「悪魔化」
朝日新聞が、敵とみなす対象をナチスなどになぞらえる手法は今に始まったことではない。私はここ数年でも『なにがおかしいのか? 朝日新聞』『朝日新聞は日本の「宝」である』といった自書でその種の実例を多数紹介してきた。
つい最近の朝日新聞朝刊(5月27日)でも編集委員の大野博人記者が「日曜に想う」というコラムで、ナチス・ドイツに協力したフランス人元エリート官僚を日本の官僚と重ねて、安倍政権を非難していた。2015年8月には朝日新聞の特別編集委員の富永格記者が、ナチス支援者が安倍晋三政権の支持者であるとする内容をツイッターに書き込み、削除するという出来事もあった。
敵を、悪の元凶という認定が定着しているヒトラー政権などになぞらえ、両者は似ているとか同様だとするレトリック(言辞)は、米国や英国では悪魔化(demonization)と呼ばれる。
2014年から2015年にかけて、中国政府が自国の国連大使や米英駐在大使を動員して、日本や安倍首相への糾弾キャンペーンを打ち上げたことがある。「日本は核武装を進めている」「日本人は世界でも最も野蛮で残酷」「安倍首相はハリー・ポッターの悪の魔法使い」というような誹謗だった。このときは、英国の有力雑誌エコノミストや米国の中国専門家の多くが「中国による日本の悪魔化」と断じて、中国を非難した。
朝日新聞のナチス・ドイツへの言及も、そんな悪魔化という言葉を連想させてしまう。